【学会参加報告】口唇口蓋裂学会に聴講参加しました
PGC Schoolsのインストラクターである大野夏実、松野友理、上西花奈の3名が、2025年10月23日(木)から24日(金)にかけて開催された「口唇口蓋裂学会」(会場:国立京都国際会館)に聴講参加しました。
学会の概要
本学会では、口唇口蓋裂に関する最新の術式や構音機能、歯列矯正、中間顎手術、鼻や口元、傷跡の修正術、さらに心理的サポートに至るまで、多岐にわたるテーマで講演・発表が行われました。
形成外科、口腔外科、小児科、歯科、言語聴覚士など、多職種が協働しながら患者様の長期的な支援に取り組む姿勢が印象的でした。
学びと印象に残った内容
口唇口蓋裂は生命に関わる疾患ではありませんが、出生前から家族に大きな心理的影響を与える疾患です。実際に育児放棄や自殺企図、堕胎に至るケースも報告されており、患者様自身も哺乳・摂食・構音・歯列など、成長の過程でさまざまな課題を抱えています。
特に印象に残ったのは、心理的支援の不足についての報告です。日本では心理士が治療チームに介入していないケースが多く、医師や看護師が心理的ケアを兼任している現状が紹介されました。
一方で台湾では、胎児期に診断が下ると22週を過ぎても中絶を選択する例が多く、SNSによる誤った情報が不安を助長しているという社会的背景も共有されました。こうした状況を踏まえ、正しい知識を広く伝えるための発信力の重要性が強調されていました。
また、出生前から家族に向けたワークショップを開催し、正しい知識や哺乳指導を行う取り組みを行っている病院の報告もありました。こうした活動により、出生後の受け入れがより円滑になることが示されており、「生まれてくる命が祝福されるように」という思いを支える多様な形があることを実感しました。
今後の取り組みに活かせること
今回の学会参加を通じて、カウンセリングの重要性を改めて感じました。
顔はその人のアイデンティティであり、そこにはそれぞれの人生や想いがあります。アートメイクは、傷跡をより自然に整え、自信を取り戻すための「最後の仕上げ」として大きな役割を担っています。
一方で、「完全に無かったことにしたい」という思いから複数の医療機関を訪れる方も少なくなく、医療補助アートメイクにおいてもそうした方々への寄り添い方や心のケアを考える必要があると感じました。
今後は施術技術の向上だけでなく、講習の中でも今回の経験を生徒様に共有し、医療補助アートメイクにおける「向き合い方」や「在り方」を伝えていきたいと考えています。また、正しい情報を社会に届ける発信方法についても工夫を重ねてまいります。

さらに、ポスター発表で取り上げられていた「修正術による満足度調査」は大変参考になりました。これを口唇口蓋裂アートメイクに応用し、患者様の満足度向上に活かすことができるのではないかと感じました。
一方で、この調査では「期待値が高すぎる」患者様も見受けられたという報告がありました。アートメイク分野でも同様の傾向があり、施術前に写真やビジュアル資料を用いて丁寧に説明することの大切さを改めて実感しました。
まとめ

口唇口蓋裂の治療には、長年にわたる多職種の連携と努力があり、その積み重ねによって現在の高度な医療技術と支援体制が築かれています。
私たちはその流れの中で、「最後の仕上げ」として傷跡やリップのアートメイクを提供する立場にあります。その意義を改めて感じるとともに、より良い形で患者様に寄り添う方法を模索してまいります。
また、学会では大阪の口唇口蓋裂患者会代表・小林えみか様ともご一緒し、「アートメイクは患者様にとって最後の希望であり、喜びでもある」とのお言葉をいただきました。
この言葉を胸に、技術の研鑽だけでなく、患者様の幸せに寄与できるアートメイクの在り方を追求し続けてまいります。
